法律用語が並ぶと読む気がなくなるけれど
競売の3点セットを開くと、抵当権、借地権、法定地上権、賃借権……聞き慣れない法律用語がズラリ。読む気がなくなるのは当然です。でも、これらの権利関係を見落とすと、落札後に「この土地は使えない」「建物を取り壊さないといけない」といった深刻なトラブルに発展します。
全部を理解する必要はありません。「これだけは確認すべき」というポイントに絞って解説します。
抵当権は競売で消える(原則)
抵当権とは、ローンの担保として不動産に設定される権利です。住宅ローンを組んだことがある人なら馴染みがあるでしょう。
競売で物件を落札し、代金を納付すると、物件に設定されていた抵当権は原則としてすべて消除(抹消)されます。民事執行法第59条で定められた「消除主義」と呼ばれるルールです。買受人は、前の所有者のローン残債を引き継ぐ必要はありません。
借地権付き物件に要注意
建物だけが競売にかかり、土地は別の人が所有している――これが「借地権付き物件」です。落札すると、建物の所有権と一緒に借地権(土地を借りる権利)も引き継ぎます。
借地権付き物件は土地代がかからない分、落札価格は安くなります。一見お得に見えますが、毎月の地代支払い、更新料、建替え時の承諾料など、長期にわたるコストが発生します。
借地権付き物件は「安い理由」があります。地代のランニングコストを30年分計算し、所有権の物件と比較して判断しましょう。
法定地上権:土地と建物の所有者が別になるとき
法定地上権は、競売で最も誤解されやすい権利の一つです。土地と建物が同じ人の所有で、どちらか一方だけに抵当権が設定されて競売にかかると、建物のために自動的に地上権が発生します(民法第388条)。
どういうことか、例で説明します。Aさんが土地と建物の両方を所有していて、土地だけに抵当権を設定してローンを組んだとします。返済が滞り、土地が競売にかかってBさんが落札。このとき、Aさんの建物は宙に浮いてしまいます。「出ていけ」と言われたら、Aさんは住む場所を失います。
こうした事態を防ぐために、建物のためにBさんの土地の上に自動で地上権が発生する。これが法定地上権です。
賃借権:入居者がいる場合のルール
競売物件に賃借人(入居者)がいる場合、その賃借権が競売で消除されるかどうかは、賃借権と抵当権のどちらが先に設定されたかで決まります。
- 抵当権より後に設定された賃借権:競売により消除される。賃借人に退去を求められる
- 抵当権より前に設定された賃借権:消除されない。賃借人はそのまま住み続けられる
投資用として購入する場合、消除されない賃借権(オーナーチェンジ)は入居者つきで家賃収入がすぐ得られるメリットがあります。一方、自宅用に購入する場合は入居者に退去してもらう必要があるため、消除される賃借権であることを確認してください。
法的リスクの確認は3点セットの「物件明細書」が最重要。「売却により消除される権利」「消除されない権利」「法定地上権の成否」がすべて記載されています。
短期賃借権保護制度の廃止
2004年の民事執行法改正以前は、「短期賃借権」という制度があり、競売妨害の温床になっていました。3年以下の賃貸借契約を結んで居座る手口が横行していたのです。現在はこの制度は廃止され、抵当権設定後の賃借権は原則消除されるようになりました。
古い情報サイトにはこの短期賃借権の話が残っていることがありますが、現行法では気にする必要はありません。
まとめ
競売の法的リスクは、3点セットの物件明細書を読めばほぼ把握できます。抵当権は原則消除されるので安心、借地権付きは地代コストを計算、法定地上権は土地だけの競売で注意、賃借権は設定時期がカギ。この4つを押さえておけば、法律面で大きな失敗は避けられます。
3点セットの読み方は3点セットの読み方ガイド、その他のリスクは競売物件の7つのリスクと回避方法を参考にしてください。